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「えっ」
「普通に考えて、理解できないかね? 造っているのは腕みたいなもの。ならここは人形工場だろうって。他に腕を造る仕事なんかあるのかね?」
「そりゃそうだ。あーびっくりした」
そう言うと、各々帰宅準備を始める。猪上と皆川は、さっさと着替えて先に帰ってしまった。
残る俺も帰宅しようと着替える。
「じゃあ、お先に……」
名倉さんはまだ何か悩んでいるのか、浮かない顔で退室する。
篠原と一緒か。なんか気まずいな。
「……君はどう思う?」
スーツに着替え終わった時だった。聞き間違いかとも思ったが、とりあえず答える。
「な、何を?」
「ここで造っているもののこと、ここの給料、急な人員の入れ替えについてさ」
「えっ? そんなこと言われてもな。ていうか、造ってるのはマネキンだろ?」
「くくっ、君はまともに頭が働いていないらしい。マネキンなら、機械で造ればいいさ。あんなに手間のかかる造り方しないだろうに?」
「じゃあ、あんたは何を造ってると思うのさ?」
「さて、あれだけで腕とは断言できないし……。結局は謎のままさ。ただ、ここの馬鹿高い日給、前にいたはずの従業員が一斉に辞めた理由。何か臭う」
確かに、ここには謎があるとは思うけど……。
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