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「そりゃあ、まあ気になりますけど」
「ならば、いい。何かある。気をつけるといい」
そういうと、篠原は帰っていった。
なんなんだあいつは? マネキン造ってるって言ったり、造るわけないって言ったり。
でも実際、何造ってんだろ。
帰ろうと退室すると、樋口さんがベルトコンベアの前で腕を組み立っていた。
「お疲れ様です」
「おお、お疲れさん」
「……樋口さん、訊きたいことがあるんですけど」
「ん? なんだ?」
「この工場って、何を造ってるんですか?」
樋口さんの顔が強張る。そして俺の前に立つと、冷たく低い声を放った。
「知りたいのか?」
強い重圧を感じる。訊いてはいけないことを訊いているんじゃないのか?
「いや、あの……何となく気になっただけなんで」
「……そうか」
その後樋口さんと別れ帰宅するが、どうにも疑念が強まる。
樋口さんのあの様子は、何かを隠している。だが、何を? ここの給料の高さといい、もしかしたらとんでもないものを造っているんじゃないか?
悩みは晴れず、むしろ強まっていく。
そんな次の日、仕事時間を回っても、名倉さんは俺達の前に現れなかった。
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