二日目

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「すいません」  樋口さんは冷たい声で注意をして、奥の事務室に入った。  樋口さんは変わっている。普段ははきはきして、多少温かみのある口調だ。  だが、工場のこととなると一変する。氷のように冷たく、厳しい口調へ変貌するのはなぜだろう。  そういえば、樋口さんの冷たいような感じと、似たのをどこかで……? 「樋口さん、何か怪しいッスよね」 「でもこれ以上の探索は無理ね。また見つかったら、クビになっちゃいそうだもの」 「そうですね。名倉さんのことは気になりますが……」  話し合い、今日は帰宅することが決まった。ロッカールームに戻って、荷物を手に退室する。  工場を出てすぐの所にある、錆びたバス停の前でバスを待った。程なくバスが来て、俺はそのバスへ乗り込んだ。客は二三人で、席が空きすぎているためか広く感じる。どこの席にするか迷っていると、運転手に声をかけられた。 「お客さん、どうも」 「ああ、面接行った時の!」  俺は運転席近くの椅子に座る。 「その様子だと、受かったみたいですね」 「ええ、まあ」
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