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「人が、消える工場」
「けど、不思議な話もあるんです。結構前からある噂なんですがね。辞めたはずの奴を、工場内で見たって話があるんですよ」
皆川と猪上の話が頭に過ぎる。確か、言ってたな。連絡がつかないはずの名倉を、工場内で見たって。
俺が沈黙したせいか、運転手は勝手に話を進める。
「見間違いかとも思ったんですが、どうにも本当らしくてね。何度も見たって奴もいれば、トイレでばったり会って話したって奴までいましたよ」
「……俺は見てないのですが、実際に起きてるんです。それ」
「ほーう。気味悪いもんですね。……お客さん、そろそろ駅に着きますよ」
荷物を手に、降りる準備をする。
「お客さん、もしも仕事で何か違和感があったら、工場の方へは何も言わずにバックレて下さい。勝手に辞めて、二度とこの町には来ない方がいいですよ」
「え?」
「ご乗車ありがとうございました。赤鉄駅です」
奇妙な運転手だ。そう思いつつ、俺は帰宅した。
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