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思えば、草野は鞄一つ持っていない。これはおかしいことじゃないか?
草野のスーツのポケットを漁ると、財布等は持っておらず、一枚の紙きれしか入っていなかった。
「くくっ、財布もなしで飲み屋について来るとはな。初めから僕等に奢らせる気だったのか?」
財布を持っていないと分かった時には俺もそう思ったが、唯一の持ち物である紙切れを見てそんな考えは消し飛んだ。
「製造番号100131?」
「……何だねそれは」
「さあ」
短い会話の後、俺と篠原は紙を睨むように見つめる。
製造番号って、造った物の番号だよな。なんで草野はこんなものを持っているんだ。
「草野は100131番らしいな」
「篠原さん。たまたま草野さんが何かの商品を買って、それの紙をポケットに入れていたまま忘れてたってオチですよ、きっと」
「そう思うから、君は花崎なんだ」
「何ですか、その花崎の名を見下す感じは」
「ああ、失礼。花崎は花崎でも君限定だ」
「本当に腹立つなあんた!」
「くくくっ、まあ冗談はこの辺にしよう」
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