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髪を染めた若い男子や幸薄そうなおっさん、ひょろいもやしみたいな男や、筋骨隆々で骨太なおやじ。
ベンチに座っていたそいつらの注目を集めた俺は、一瞬入ることをためらった。
だが、気を取り直して中に入り、自分のロッカーを探す。難無く見つかったため、中に荷物を詰め込み、スーツから繋ぎに着替えた。
すると、背後から妙な気配を感じた。振り向くと、骨太なおやじが俺に熱視線を送っている。
顔の筋肉を引き攣った。なんで見てんだ? 俺、何かしたか?
「あんた、名前は?」
骨太のおやじは重低音の声で、静かに訊ねてくる。
「あっ、失礼しました。花崎吉平です。本日から勤務することになりました。よろしくお願いします」
「……いいわねぇ」
「はい?」
「いい子入れてくれたじゃない。工場長ったら憎いことしてくちゃってもう! あ、あたし皆川っていうの。下の名前は秘密よ」
ああ、そっちの方ですか。
「花崎さんだっけ? マジビビるっしょ。掘られないよう気をつけてね。あっ、俺は猪上順平。ヨロシク」
若い奴は剽軽(ひょうきん)な感じで話してくる。
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