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龍太とは、毎日手紙交換をした。
毎日、その日の些細な出来事や想いを綴り、あたしの書いた手紙は龍太の筆箱に入れ、龍太が書いた手紙は龍太の筆箱に入っていたから、抜き取った。
他人には教えてはいけない秘密だった。
互いに携帯を持っていたけど、あたしは人にアドレスを教えてはいけなかった。だから、教えられなかった。
不器用ながらも、龍太は一生懸命あたしを愛してくれた。
ケンカしたら必ず龍太が謝ってきてくれた。
泣いて帰っていたら、走って追いかけてきてくれた。
なにをするにも、気まぐれなあたしのペースに合わせてくれた。
段々と、心が元に戻っていく気がした。
おだやかな風に包まれたような感覚。
…龍太は太陽だ。
あたしのことを、いつも照らしてくれる。
…俊とは違う。
あたしはいつの間にか、そう確信した。
龍太を選んで良かった。
いつしか、そう思った。
―――――――――――――――
この時のあたしは、これから始まる地獄と呼んで言い程過酷な日々を、想像できませんでした。
幸せだったからです。
今となっては、『幸せは、時に人の感覚を奪う』そう考えるようになりました。
過去の、汚れのないあたしに伝えたい。
『現実を見て。』
さぁ、あたしが体験した日々も、中間地点です。
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