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六月中旬。
俊とは仲直りして、あの日以来、また一緒に過ごすようになった。もちろん、あたしは不安を抱えたまま。
六月下旬。
夢の意味が分かる日が来た。
あたしが、同じクラスの岩本龍太に告白されたのだ。
(岩本龍太は、はっきりいって俊よりかっこいい。頭は良くないがスポーツは万能なので、女子からは人気。しかしナルシと言う欠点があり、男子からはあまり好かれていない。)
このことは、すぐ俊の耳に入った。
呼び出され、強引に手を引かれ、連れて行かれた場所は、龍太の前だった。
俊 『こいつに告白したんだって??』
龍太 『だから何??』
あたし 『俊、やめて??龍太、ごめんね!!』
俊は、龍太がどうしてあたしに告白したのかと、尋ねていた。しかし龍太は俊の呼びかけを無視し、本を読んでいた。
やがて、俊は我慢できなくなったのか、龍太の胸ぐらを掴み、怒鳴り散らした。
『てめぇ、聞いてんのか!!どうしてこいつに告白なんてしたんだよ??こいつはオレの彼女なんだよ!!』
…オレの彼女…その言葉を聞いた瞬間だった。
龍太が俊を殴ったのだった。
龍太が叫ぶ。
『お前なぁ、そんなんで佐藤の彼氏気取りしてんのか??
はっ、笑わせんじゃねぇ!!
佐藤が、どれほど寂しさを感じているか
見て分からないのか??おまえの目は節穴なのか!!』
びっくりした。あたしの心が、龍太に見透かされていた。
そう。龍太が言ったことは本当のこと。
俊 『は??佐藤はオレといて絶対幸せだ。な??』
あたし 『…。』
何も言えなかった。初恋が実ったのはすごく嬉しいと思った。でも、何かが違う。俊はこんな人じゃないのだ。
龍太 『な??だから言ったんだ。このままじゃ、佐藤が精神的におかしくなると思ったから、佐藤を守りたくて告白したんだ。佐藤の小さな異変にも気付かないお前に、佐藤の彼氏をやる資格なんてねぇんだよ…。』
嬉しかったが複雑だった。
あたしは、初恋相手で、でも分かり合えない俊と、今まで恋愛対象にしてこなかったけど、あたしを分かってくれる龍太、どっちを取れば幸せか分からなかった。
しばらくの沈黙の末に、俊が口を開いた。
『オレは、龍太に負けたよ。でも、諦めたわけじゃねぇ。また佐藤を振り向かせてやる。それまでは、佐藤と別れる。』
『流…。さよなら…。』
言われた瞬間に、夢を思い出した。
`さよならって…まさかこのこと??´
あたしの初恋は、呆気なく終わりを迎えた。
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