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目が明るさに慣れたのか、さっきまで確認できなかった人物の容姿がはっきり確認できる。
真っ黒な髪は後ろで束ねられ、柔道着を着こなした少女はやわらかい唇を小さく動かし「早く支度なさらないと学校に遅れますよ?」と小さい声で呟いた。
その声はか弱い乙女を想像させるような優しいかすれた声で、声優界でトップに立てるほどの美声に感じられた。
私は見覚えのある容姿と美声からその少女が友達であることを認識する。
「ごめん…ミサキは先に行っといて♪今日は朝からたいへんなんだー」
彼女の名前は須藤三咲。
私と同じ聖クロニカル学園の一年生で柔道部に所属している。
一年生ながらに黒帯であり、全国大会にも顔を出し何度も表彰経験のある優秀な学生だ。
今日は朝練であろうか、朝から柔道着を着て大きな荷物を背負っている。
「でも…なっつん、早くしないと遅刻するよ」
少し焦り気味で言う三咲に対し、私は冷静に携帯のデジタル時計を確認した。
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