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「神主さん、神様っていると思いますか?」
僕は不意にそんな質問を目の前の巫女さんに投げた。
巫女さん……澄原神主さんはどこかきょとんとした目でこちらを見ている。
ちなみに澄原神主というのは本名らしい。自分で言っていたのがどうも怪しいが。
しかし神主さんの名前をどう呼べばいいか分からないし、何より僕の知っている他の人物がこの巫女服の人物を「神主さん」と呼んでいるのだからそう呼ぶしかないと思う。
「あのねぇ。それは一応、神様に仕えているアタシに対してのケンカと受け取ってもいいのかィ?」
「まさか。そんな命知らずじゃありませんよ」
神主さんは強い。
前にこの澄原神社で不良三人組にカツアゲ(ちょっとジャンプしてみろよオラァみたいなノリで)に合っていたとき、
「あのさァ、今更ジャンプカツアゲってのは無いんじゃないのかィ?」
そう言ってもっとも効率の良いカツアゲの仕方、とか言ってその不良三人組をものの数分経たない間にボコボコにした挙げ句、どこから取ってきたのか物干し竿にその不良三人組をいとも簡単につるし上げ(この時点でこの人は重量挙げの選手ではないかと疑ったくらいだ)、財布を賽銭箱の中に無造作に放り投げた。
以上の事柄からこの人はおそらく敵に回してはいけない人類なのではないか、と密かに思うくらいだ。
「……いっとくけどさァ? 心の声がだだ漏れだから。アタシを敵に回しちゃァいけないってのは、この町の常識さね」
……訂正。この人だけは敵に回さないようにしよう。
「それで? 答えはどうなんですか?」
「べっつにィー? 神様なんざァアタシゃ信じて無いんでね」
「じゃあ何で神社を」
「掃除とお祈りしとけば勝手に金と酒が転がり込んでくるからさね」
「なんて不良神主だ!?」
「はっは。まぁ世間なんざそんなモンさね」
「少なくとも世間はあなた以上に軽くは無いと思います」
「言うねェ。青二才」
「神様に仕えているのに信じてない神主さん程でも無いんですけどね」
「はっは。やっぱあン時助けなければ良かったかィ?」
「まさか。そこまで不敬者じゃありませんよ」
はっはっはっはっは。
笑い声が閑散とした神社に響く。
からからと木の枝と木の枝がぶつかる音を聞いて、僕らは笑い声をやめた。
「で? 結局のところはどうなんですか?」
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