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神主さんがそうやって人をはぐらかして言うことにはもう慣れている。無論これで信じるのは余程の馬鹿かもしくは正直者くらいだろう。
神主さんは少し間をおいて喋った。
「無論信じているさね。じゃなければ神道になんか行かないからねェ」
「信じていないふりしてた理由が、僕には皆目見当が付かないんですけども」
「アレはお前さん、その日その時の気分で返答なんざ変わるものさね。曇っていれば信じてない。快晴ならば信じてる、雨天ならば絶対信じず、カンカン照りなら狂信さね」
「思いっきり晴れの日と雨の日で変わってる気が……」
「もしくはその逆さね」
その日その時の気分で神様に対する信心が決まるんだ……。
「まぁともかく、だ。アタシゃ基本的に神様は信じちゃいるが、信じていないフシもあるんでねェ」
「その信じていないフシ、ってなんですか?」
「おっとっと。これに関しちゃァのぅコメントということで一つ堪忍してくれないかねぇ?」
「なに急に時代がかった喋り方してるんですか」
「はっは。きびしいねェ」
「さてと」と神主さんは大きくのびをして社務所の方角に向かう。
「どこ行くんですか?」
「迎え酒だよォ。迎え酒。そろそろアンタも学校に行く時間だろォ? 妹起こしてくるからちぃと待ってろィ」
「順番としてはどっちですか?」
「酒飲んでから妹起こすわ」
「先行ってます。みいこさんには悪いですけど」
「はっは。まぁ気ィ付けて行きなさね」
僕はそう言って賽銭箱に十円入れた後、学校に向かうことにした。
「あァあァ。いっちまったねェ……さてと、」
「いまのいままでの一部始終を見ていたアンタら。そう、アンタらだよ」
「人のプライバシー侵害にも程があるんだが、まァ、見てるだけなら勘弁しておいてやるさね。なにかしてくればすぐに分かる。見た感じ害もなさそうだし、しばらくは放っておいてあげようかねェ」
「……ああ、そうだ。一遍、言ってみたい一言があったんだっけなァ」
「……うほん。『この物語はフィクションです。実在する人物、団体、個人とは何ら一切関係はありません。また、文章内の事象を真似すれば法的な措置が載られる場合がありますのでご注意ください』……とォ。さてと、社務所で酒でもかっくらうかねェ」
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