カタルシスイブ

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会社の後輩──もっといえば泣きながら「できましぇーん!!」とか喚いて、結局私に余計な仕事を押しつけて帰った張本人。 『ありがとうございます』なんてひらがな十文字のタイトル欄には、様々に色づけされた顔が同じ数だけこっちを見て笑っている。泣いている顔も笑って見えた。 本文は──目を通す気になれなかった。文頭がタイトルと同じ言葉で始まっていることだけ確認して、私はそっと目に悪い光を閉ざす。液晶の明かりなんて、眼前のディスプレイだけで十二分だ。だからだれか二分もらってほしい。 …………帰ろう。私は残業のお供にと用意していた、もうすっかり冷めてしまったカップコーヒーを一息にゴクリと飲み干し、必要書類等々をバッグに詰める。 そしてもう一度吐いたため息を浴びたパソコンの電源を落とし、疲弊した身体には重たいバッグを肩にかけ、オフィスの明かりを消したところでのこと。 「……?」 すっかり夜の帳(とばり)が降りた街路から、ふとあの歌が流れてきた。 ────クリスマスソング。 ワンフレーズだけ聴かせて遠ざかっていくあたり、きっとどこぞの浮かれ気分の人間が車から愉快に陽気に揚々と垂れ流していったのだろう。もし後輩だったら許さない。そんな妬みと一緒に思い出す。 「……そっか、今日、か」
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