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──夢で見たような。そんな一面の銀世界が、翌日、私の目の前にあった。世界が雪に覆われていた。
枕元にあった綺麗な梱包の施されているプレゼントを確認して喜んで。願った通りの玩具だったことを喜んで。サンタクロースはやっぱり本当にいるんだと喜んで。
「お父さァーん!!」
私はいびきで滑稽な音楽祭を開催していた父を文字通り叩き起こし、「もう少しだけ……」と、未だ微睡みの中で発せられた願いも無視して強引に外へと引っ張り出した。
「うわぁ……!」
地面も屋根も門も家の外にある電柱も──全部が一様に白を纏い、太陽の光を反射し輝いて映る。寒さなんてこれっぽっちも気にならない。むしろ快くさえあった。
「さっむ……っ!」
父は違ったようだけど。
「教えて! 遊び!」
せがむ。するとやれやれ、なんて。くたびれたように息を漏らしてから、父は約束通り“それ”を教えてくれた。
まず雪を固め、それをコロコロ転がしながら得意気に話す父は、なんだかんだ言って結局最後まで付き合ってくれるつもりだったのだろう。
けれど私はそれを拒んだ。どうしても一人で、自分だけの力で自分だけの“それ”を完成させたかったから。
やり方だけ聞いて、あとは父を家に押し戻し、それからずっと黙々と、本当に黙々と何時間もひたすら雪を転がし固める作業を続ける。
そしてまだ顔を出して間もなかった太陽が天高く昇った頃、ついに“それ”は出来上がり、私の前でニコニコと微笑んでいた。
「へへへっ……」
忘れるはずもない。雪だるまの"ゆきんこちゃん"との出会いである。
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