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今にして思えばその身形(みなり)はなかなかに醜悪で、指で雪を彫って描いた顔もとても人に見せて誉められるものじゃなかったけれど。
私はこれ以上ないくらいに充足していた。やり切った。やり遂げた。きっとそんな思い故だろう。
それから日が落ちるまで、私はゆきんこちゃんと遊び続けた。具体的になにをしたかと問われれば、言葉にできる名前のついた遊びなどきっと一つとしてやっていない。
けれど──それでよかった。幼少の時分、そこにいることを楽しむことそれ自体が遊びであり、自由を妨げるルールなど必要ない。
夕食時、両親にそれはそれは事細かにゆきんこちゃんのことを話したのが懐かしい。主述の関係なんてあったもんじゃない。整理することを忘れた滅茶苦茶な説明。それでも二人は笑顔でそれを聞いてくれた。笑顔の大輪が咲いていたクリスマスの夜。
少しして、明日も早くからゆきんこちゃんと遊ぶために私は眠った。決まりきった──そうなるより他にない、他にあるはずもない結末を知らないまま。
根拠なんて持ってすらいなかった。にも関わらず、一瞬は永遠で。あるものがなくなることはないと。そう──信じていたんだ。
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