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──
────昨日そこにあったものは、翌日微かな跡形を残してなくなっていた。
雪は太陽に照らされて水に戻る。
知っていた、そんなこと。そんなことを知らないほど無知じゃなかった。けれど────。
「ゆきんこ……ちゃん……」
……認めたくないじゃない。認められるわけないじゃない。ゆきんこちゃんもただの“雪”だと理解していたとして。
私は昨日『雪を使って遊んだ』んじゃない。『雪と一緒に遊んだ』んだ。そしてその日一緒に遊んでくれた存在が…………消えたんだ。
少なくとも私の中でゆきんこちゃんはゆきんこちゃんで。それ以外の何者でも何物でもなくて。だから『雪が溶けた』で済ませられるわけが──ないじゃない。
────泣き止むのにそう時間はかからなかった。父の困ったような顔を見て、幼いながらに『泣く』という行為の卑怯さを自覚したのも理由の一つ。でも、本質は違う。
切なかった。
この世にあるあらゆる一切が変わらずにはいられない。そんな真実が。霜焼けのヒリヒリする痛みをいつの間にか忘れていた手が。なんだかとても切なくて────言葉にできない悲しみは形にすらできないのだと、漠然と悟った人生最初のトラジェディークリスマス。
泣いて、知って、諦めて。私は少し、大人びた。
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