2730人が本棚に入れています
本棚に追加
『王子、クロン村に到着致しました。この先は案内が無ければ進めません。女性に道案内をお願いしたいのですが…』
運転手がマイクで話しかけてくる。
するとレナードが少し考える素振りを見せた。
「……美咲、君の家はここからかなり遠いかい?」
「いいえ。クロン村は小さな村です。ここからなら歩いても15分くらいで…」
「OK。車を降りて歩く。」
『お、王子!?それはいけませ……』
慌てた様子で言う運転手の声を、手元のスピーカーをOFFにして遮る。
ポカンとする私に向かって、レナードは悪戯っ子のように笑った。
ニュー・カルフィードの国民はもちろん、他国でも顔を知られている王子が知らない村を徒歩で歩くなんて危険過ぎる。
私も止めようと息を吸った瞬間、レナードは勢い良くドアを開けた。
遅かったか……。
ガックリ肩を落としていたら、王子が呟く。
「…なんだ……?これは……」
微かに震える声が動揺に満ちていたが、何の事を言われているのか分からず首を傾げるしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!