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辛そうな声。
険しい目のまま村を見渡すレナードの背中を見て、私は自分が恥ずかしくなった。
生まれながらの王子様だと思っていた。
苦労も知らず、ただ王子という立場に甘え生きてきた人なのだと。
だけど、目の前に居るレナードは…きちんと国民の事を思っている。
国民を幸せにするのが自分達の責務だと当たり前のように理解している。
この人が…未来の王なのだ。
ニュー・カルフィードの、未来の希望なのだ。
「…すぐに王に報告しなければ。いや、先に美咲のご両親に謝罪を…」
「いえ、謝罪など必要ありません。」
私がきっぱりと言い切ると、レナードはようやく顔をこちらに向けた。
「この村を助けるために走ってくれようとしている方に、何故謝罪されなければならないんです?元々たいした怪我ではありませんし、たくさんお土産も頂きました。……充分です。本当に、ありがとうございます。」
レナードが半ば強引に買ってくれた、芋や小麦粉、それにお米やお肉…。
それらが入った紙袋を持ち上げ、私は笑って見せた。
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