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「……はぁ…」
ミシンの音が響く部屋の中。
絶えず手を動かしながらも、ついついため息が零れてしまう。
レナードと出会ったあの日から今日で5日が経とうとしていた。
しかし、レナードがクロン村に現れる気配はない。
……2、3日中って、言ってたのに…。
胸の中を嫌なモヤモヤが支配している気がして、またため息を漏らした。
「……ふぅ…出来た。あとはこれを街に持って行って…」
ミシンを停止しながら呟き、ふと時計に目をやる。
途端にハッとして立ち上がった。
「大変!お父さんのお昼ご飯!!」
時計の針が指すのは1時。
いつもは12時きっかりにはご飯を作って食べさせているから、きっとお腹を空かせているに違いない。
慌てて作業用のエプロンを脱ぎ捨てて部屋を出た。
粗末な木製のドアがギィと嫌な音を立てる。
部屋を出てすぐの狭いリビングでは、車椅子に座ったお父さんがいつものようにニコニコと笑っていた。
「ごめんなさいお父さん!お腹空いたでしょう?今すぐ作るからね。」
大きな声で話しかけると。
お父さんが「気にするな」とでも言いたげにうんうんと頷く。
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