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お父さんは、もう何年も前から車椅子で生活している。
農業で腰を痛め、下半身が全く動かなくなったのだ。
高齢な事もあり、歩けなくなってからは急速に老いが加速した。
耳も遠くなったし、物覚えも…。
ただ、お父さんの元々の優しさは失っていないから、介護は全く苦ではない。
お父さんにご飯を食べさせて、先ほど仕上げた服を手に立ち上がる。
ニュー・カルフィードに昔から伝わる刺繍などを施した、ワンピースだ。
学もない私は、唯一の特技である裁縫でこうしてチマチマと洋服を作り街で売って稼ぐしかない。
出かける支度をしていたら、ドアがノックされた。
「はい?どなた?」
お隣のおばさんかな?
などと考えつつ、返答を待たずにドアを開ける。
その途端、私の目は飛び出んばかりに丸くなった。
「レ…レナード!?」
そう。
そこに立っていたのは、レナードだったのだ。
申し訳なさそうな笑みを浮かべ「遅くなってすまない」と低い声が言う。
突然の再会に気が動転して、私はしばらくその美しい顔を凝視していた。
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