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街では、私よりも小綺麗な服を着た主婦達が商店街で買い物をしている。
私はその間を縫うようにして進み、行き慣れた八百屋の前で足を止めた。
「こんにちはおじさん。」
店主に声をかける。
おじさんはそれに気付くと人懐っこい笑みを向けてくれた。
「やあ、美咲!今日は何をお望みかな?」
「今日はお芋が欲しいの。安くしてくれるでしょう?」
「ははは!参ったな~可愛い子の頼みは聞かないと。」
そう言って、おじさんは袋詰めされたお芋を私に手渡す。
「100円負けよう。98円で良いよ!」
「きゃあ!おじさん!!ありがとう!!」
98円をおじさんに渡し、ハグをした。
この国では挨拶みたいなものだ。
おじさんはいつもとても良くしてくれる。
それは、私のお父さんの病気を知っているからだ。
お芋を大事にカバンにしまおうとした時。
不意に、近くで歓声が上がった。
「え…何?」
驚いていると、急に見知らぬおばさんが駆けてきて私にぶつかる。
「きゃっ!!」
その衝撃で転んだ拍子にお芋が地面に落ちてしまった。
拾おうと手を伸ばすとその上をたくさんの足が通過していく。
「痛っ!」
誰かの足が私の指を踏んづけた。
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