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黄色い悲鳴が濃くなった。
どうやら王子が車を降りたらしい。
貧困な村を置き去りにして、裕福に暮らす王子様。
私達のように毎日の食事代に頭を悩ます人々の事など、頭の隅にも無いに決まっている。
「お芋……」
視線の先では、買ったばかりの芋がボロボロになって転がっていた。
蹴り飛ばされ、アスファルトで擦れたのだろう。
これだけで4食は作れたのに…。
「…失礼、君。」
悲しいのか悔しいのか。
ただ俯いていたら、後ろから低く艶のある声が聞こえてきた。
「!?」
驚いて振り向くと……そこにはこの世のものとは思えない程の美しく顔がある。
「……王子……様?」
新聞などで顔写真は見たはずなのに、目の前で見るその美しさは言葉では表し難いものがあった。
特に、濃い赤に染まった、その瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
王の血を引く者だけが持つ、赤い瞳。
「俯いて立って…何か困り事があるのか?」
低い声が尋ねてくる。
なんてセクシーな声なのだろう…。
ボーッとなっていたら、八百屋のおじさんが少し苛立った声で言った。
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