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王子が眉を寄せ息を詰める。
それに苦笑しながら、私はありのままを話した。
物心がついた頃からホームレスだった事。
捨てられた時に着ていた服には、日本語で『ルシィーダ 美咲』『ひまわり第4保育所』と書いてあった事。
言葉も、生きていく術も、仲間のホームレスに教わった事。
今のお父さんに拾われるまで……物乞いをして生きていた事。
物乞いだった事を恥じた事は一度もない。
だって、幼かった私はそうしなければ生きて来れなかったから。
だけど目の前でこうも複雑な顔をされると、やはり俯いてしまう。
軽蔑しただろうか。
物乞いを車に乗せてしまった、と後悔しただろうか。
しかし。
次に王子が発した言葉は、そのどれでもなかった。
「…素敵な父上なんだね?君は今幸せなんだ。だから…こうして全てを包み隠さず話してくれた。」
「王子…」
「王子なんてよしてくれ。レナードと。」
優しい笑顔に射抜かれ、胸が高鳴る。
レナード、だなんて呼べるわけがない。
「美咲、君が生きていてくれて良かった。そうでなければ…私と美咲は出会えなかったのだから。」
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