罪悪感と甘い毒

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家について、湯舟に浸かりながらぼんやりと今日のことを考えた。 どうしてああなったのか。 言い知れぬ不安と、顔も知らない奥さんへの拭い去れない罪悪感。 「……ごめん、なさい。」 届くわけのない小さな謝罪。 罪悪感は確かにあった。 それでも、彼に触れられた身体は乾くどころか、いつまでも熱を持っていた。 舌、柔らかかった…。 キス、上手だったな…。 (きっと、何人もああやって抱いてきたんだろう…) そう考えた時、胸の奥がズキッと痛んだ。 この気持ちは、なんだろう。 自分の答えを見失った。 彼といても、幸せにはなれない。 それでも、はまってしまいそうな自分がいる。 中毒性のある、甘い毒。 まるで麻薬のようだと感じた。 逃げ出さなければ。 このまま、終わるのは嫌だから。 でも、どこかで彼に抱かれることを渇望している自分がいた…。 一緒に、毒を吸っていたかった…
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