序章

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 今は――神も、魔法の存在も忘れられ――貴族が、騎士が、ただただ鋼鉄の剣を振りかざし、覇権を競う戦乱の時代――  ここはユースフロウ大陸。  世界最大にして、唯一の大陸だ。  他の陸地は『大陸』と呼ぶにはあまりにも小さく、ユースフロウ大陸を囲むようにして六つだけが存在している。  そのユースフロウ大陸の片隅を、曇り空の下、ヒュウヒュウと風が鳴る峠道で、大きな剣を背負った一人の少年が、足取り重く歩いている。  その少年の纏うボロボロのローブが風でめくれる度に、両腰からは短い剣の柄が覗く。  腰には二本帯刀し、更に背中に大剣を有しているのだ。  不意に突風が少年のローブのフードを吹き飛ばし、顔を顕にした。  十五六歳だろう小柄な体に、漆黒の瞳と長めの髪。  頬には矢印のような傷を持ち、意思の強さを表すようなつり上がった眉が印象的だ。  彼の名はオズワルド。 『死にたがり』のオズワルド・アヴァロンという。  現在は傭兵としてその名を轟かせるオズワルド。  だが、元々はとある騎士団に所属していた正騎士であり、『死にたがり』の通り名で恐れられた凄腕剣士だ。
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