1064人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
今は――神も、魔法の存在も忘れられ――貴族が、騎士が、ただただ鋼鉄の剣を振りかざし、覇権を競う戦乱の時代――
ここはユースフロウ大陸。
世界最大にして、唯一の大陸だ。
他の陸地は『大陸』と呼ぶにはあまりにも小さく、ユースフロウ大陸を囲むようにして六つだけが存在している。
そのユースフロウ大陸の片隅を、曇り空の下、ヒュウヒュウと風が鳴る峠道で、大きな剣を背負った一人の少年が、足取り重く歩いている。
その少年の纏うボロボロのローブが風でめくれる度に、両腰からは短い剣の柄が覗く。
腰には二本帯刀し、更に背中に大剣を有しているのだ。
不意に突風が少年のローブのフードを吹き飛ばし、顔を顕にした。
十五六歳だろう小柄な体に、漆黒の瞳と長めの髪。
頬には矢印のような傷を持ち、意思の強さを表すようなつり上がった眉が印象的だ。
彼の名はオズワルド。
『死にたがり』のオズワルド・アヴァロンという。
現在は傭兵としてその名を轟かせるオズワルド。
だが、元々はとある騎士団に所属していた正騎士であり、『死にたがり』の通り名で恐れられた凄腕剣士だ。
最初のコメントを投稿しよう!