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生徒手帳は身分を証明する重要なものだ。
私は生徒手帳を開く。
「奈川学園、二年生。輕部 心結……」
書かれてあった名前を読み上げた瞬間、頭に頭痛が走った。
――カルベ ココロ
――私の名前
一瞬だが、脳裏に何らかの景色が映し出された。
石造りの高い建物が建ち並ぶ街の景色だ。
重厚な景色は、気持ちを鬱にさせる。
脳裏から景色は消え、目の前に綺麗な景色が広がる。
少なくとも、脳裏に映し出された景色よりましだ。
結局分かったことは、私の名前は輕部 心結だと言うことと、奈川学園の生徒だということ。
そして、記憶喪失だと言うことだ。
立ち上がり、辺りを見回す。
脳裏に映し出された重厚な景色は見当たらない。
ここは何処なのだろうか。
ふとその時、遠くから人の声が聞こえた。
その方向に振り向いてみると、二人の人影が見えた。
一人は、袖の肩の部分がない特殊な服を着ている、緑色の髪をした女性。
もう一人は、首にしめ縄をネックレスのように付けた女性だ。
「いた。神奈子さま、いましたよ!」
緑色の髪をした女性は、私を見つけるなり、隣にいる女性にわざわざ大声で報告する。
「叫ばなくても聞こえてるわよ、早苗」
神奈子と呼ばれた女性は、緑色の髪をした女性を早苗と呼び、彼女にむかって微笑んだ。
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