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「私達のように、自らの意思……もしくは、何かしらの怪現象に巻き込まれ、この幻想郷に流れ着いたのではないのか?」
「自らの意思……ですか?」
「あぁ。私達は外の世界での信仰を受けることが出来なくなったので、この幻想郷へと神社と湖ごと移動した」
「これまた大規模な引っ越しですね」
「ん?」
「あ、いえいえ……」
思わず皮肉みたいなことが口に出てしまった。
気に障ったのか、神奈子さんの眉がピクリと動いたのが伺えた。
神様は私みたいな人間と比べ物にならないくらい、大変な事情を抱えているのだろう。
確かに、神様が信仰を得られないということは、存在を保てないと言うこととかわりない。
神様は人々に信仰されることによって、その力を発揮すると聞く。
ん?
この事は誰に聞いたんだ?
「続きを話していいか?」
突然黙り込んだ私を訝るように見る神奈子さん。
私は慌てて取り繕う。
「あ、はい、どうぞ」
「そうか……」
神奈子さんは気を取り直すように、一度咳払いをした。
「私が幻想郷に移動した方法は、私達の神と、八雲 紫の力を利用してだ。結局、神とは名ばかりで、八雲 紫という大妖怪の協力を得られなければ、私達はこの幻想郷に来ることは叶わなかった。しかし、あなたは別」
「別?」
「ええ……。八雲 紫が外の世界で人間を神隠しにあわせるけど……その理由は知っている?」
「いいえ」
知るはずもない。
私は記憶を失っている以前に、この世界の住人ではない。
「それは、《食べるため》よ」
「………………」
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