シンユウドウシ

2/16
前へ
/30ページ
次へ
沙織、奈月、茉希、馨の4人は、その後も特に何の問題もなく、ずっと“グループ”として仲良く過ごしていた。 5月にあった修学旅行、9月の体育祭と、常に4人でわいわいしていたら、あっという間に終わっていた。 それぞれケータイに貼ったプリクラがはがれかけた頃、奈月がケータイを機種変するというので、またプリクラを撮りに行ったりもした。 4人で過ごした思い出が増えた分だけ、やっぱり4人は大切な存在になっていった。 初めは“グループ”というものに、迷いや悩みを抱えていた沙織も、10月に入り、そんなことはすっかり忘れていた。 特に、今年はいつもよりも時間が早く過ぎていっている気がしていた。 沙織は分かっていた。 間違いなく、奈月のおかげだと。 奈月は、常に沙織の考えていることが読めるのではないかと思った。 沙織がふとキツい一言を言っても、奈月がフォローしてくれる。 少し疲れていて、一人になりたいときは、そっと気を利かせて1人になれるよう、他の2人を連れてどこかへ行ってくれる。 これまで、グループで過ごしながら一人で抱えていた辛い思いを、奈月が負担してくれているように思えた。 これまではジョシの中で囲まれて過ごしているとき、いつも気を張っていた。 いつ嫌われるか分からない。 ミスをしてはいけない。 笑っていても、常に頭はフル回転で、どうにかグループに溶け込めるよう、自分の存在が悪目立ちしないように一生懸命だった。 楽しいことももちろんたくさんあり、すごく無理をしていたというわけではないが、それでも気疲れをすることが多く、何も予定がない休日は一日ぐったりと寝ていることもあった。 ただ、今年は気づけば10月になっている、という気がする。 いつもは、「やっともうすぐ今年が終わる」と思っていたが、今年は、いつ春夏が過ぎて行ったのかも分からない。それくらい、濃い思い出が沙織には残っていた。 沙織の学校は高校2年と3年の間では、クラス替えがない。受験に集中するためだという。 それを沙織はとても嬉しく思った。 「ベストメンバーだ」 沙織は4人でいるとき、心の中でいつもそうつぶやいていた。 おっとりしていて、いわゆるジョシな馨。 言いたいことははっきり言うが、嫌みのない元気っ子茉希 そして、何も考えていないように見えるのに、何故か沙織の気持ちを汲んでくれる奈月。 それに、こんなに色々なことを難しく考えてしまう沙織。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加