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「例えばさ、沙織は友達のこととか、必要以上に真剣に考えてると思う」
そう奈月が続けた。
「そう?」
沙織が聞き返す。
「そうだよー。今日にしたってさ、沙織絶対“2人で出かけたら、茉希と馨に気まずいな~、申し訳ないな~”って思ってるでしょ?」
「え…」
いきなり、奈月が突っ込んだ発言をしてきて、思わず次の言葉が出てこなくなる。
「気にすることないんだよ。だって、あたしは今日のことは最初に沙織に言いたかっただけだし。誰か連れてくるなら沙織が良かったし。別にうまくいったらあの2人にも言うけどさ。隠してるわけじゃなくて、単純に沙織に先に言っただけ!」
「でも、そういうの気まずくない?…同じグループだし。良い気分はしないんじゃないかな?2人も…」
「沙織は、“グループ”って枠に囚われすぎなんだよ。グループが同じだと、みんなと同じくらい仲良くないといけないの?その中で差が出るのは人間なんだもん。しょうがないよ!」
あっけらかんと言う奈月に、思わず沙織は言葉を失った。
私がグループに囚われてる?
誰よりもグループという存在に嫌気がさしてたはずなのに?
「沙織は、マジメ子ちゃんだからなぁ。“一匹オオカミ”っぽいなんて言われてるくせに、本当は誰よりも寂しがり屋だからね」
ひひっと、ふざけたような笑顔を見せながら、奈月は続けた。
「え?私が寂しがり屋?」
思わず、沙織が聞き返す。
「そうだよー。気づいてなかったの?沙織は1人になりたくないから、あんまり人と深く付き合わないんだなーって思ってたよ。それってめっちゃ寂しがり屋じゃない?」
1人になりたくない、から、人と深く付き合わない。
沙織は奈月の発言を頭の中で反芻していた。
これまで沙織は誰かと深く関わるのは面倒くさい、と思っていた。
一線を画して付き合っている、と自分でも思っていた。
それは、その方が自分が楽だと思っていたから。
でも、何でその方が楽だと思うのか?
そこまで考えたことはなかった。
自分は人づきあいが苦手なんだな。
むしろ一人が好きなんだな。
そう沙織は考えていたのだ。
「さっちの“さ”はさみしがりんぼうの“さ”だからね!」
さらに奈月が続ける。
ずっと黙りつづけてしまっていたことに気付いた沙織は、
「そう見えるのかぁ。そんなことないんだけどなぁ」
とはにかむのが精いっぱいだった。
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