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今日も香織は居酒屋で沙夕の愚痴を聞いていた。
(沙夕、ちょっといつもよりペース速い)
沙夕は今事務所が売り出し中のバンドのボーカル、香織は事務所から派遣されたマネージャー。
メジャー第一弾シングルを出したばかりにもかかわらず、沙夕の愚痴は八割がメンバーの悪口。
そして二割は彼の奥さんの悪口。
ビールをしこたま飲んで、ハイボールを二口、三口、口にした沙夕の今の話は奥さんの愚痴である。
「あの肉玉、ホントイライラすんだよ~」
「奥さん太ってるの?」
「もうあり得ねえって、産後なんか特に見られたもんじゃないね!」
香織は苦笑いしながらグレープフルーツサワーに口を付けた。
「…かおちゃんみたいな、スレンダーな美人さんと結婚したかったな」
すっと大きな、長い指をした手が、香織のジョッキを握る手に重ねられる。
(この超絶イケメンたらし野郎…)
あまり酒に強くない香織は、すでにほんのり酔って沙夕のペースに飲み込まれてしまう。
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