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長針が動くか動かないかわからない、そんな僅かな時間。
彼らは宿敵と対峙していた。
――けれど。
傷を与える事も出来ず砕け散った刃。
別々の場へと弾かれた対の剣。
真っ二つにへし折られた弓の傍ら、からんと音をたて、仕込み杖は転がり落ちた。
己も含めて地に伏せる者、壁に叩きつけられた者――、力の差がありすぎた。
辛うじて体力の残った彼は、非力な拳で地を叩く。
これど、現状が……未来が変わる能力を持っているわけではない。
故、彼の目前で青白い炎に照らされた影が揺れるのを、止めることは出来なかった。
――ぐしゃ、
何かが砕け、そして潰れる音と共に地面に誰かの紅を散らした"鬼"は口角を上げる。
てらてらと鈍色に光る金棒を振り上げ、"鬼"は嘲笑う。
『はっはー、また俺たちの勝ちだぜ。
通算139勝0敗、そろそろ諦めな!』
振り下ろされた金棒は、桃太郎の頭に――
「おぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!」
悪寒に体を左に捻ると今まさに"何か"を真っ二つにせんとして振り下ろされた包丁が俺の横を通り過ぎて行った。
そして目の前には、ソレを持つ蒼刻の魔法剣士と、いい笑顔で皿を準備している餅が……いた。
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