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とめどなく溢れる涙を拭って初優勝した隆弘の凛凛しい姿を確認しようと顔をあげた。
すると…わたしに向かって近づいてくる人の姿。
ギャラリーをかき分けて隆弘がこちらに向かっくる。
え!?
まさか… わたしのもとに!?
隆弘が歩みを止めてわたしの目の前に立つ。
目と目が合う…。
「俺に会いにきたの?」
「会いにきた…」思わず本音…。
「あ、会いにきた…なんて言ったら…ストーカーみたいぢゃん…」
隆弘の瞳を見つめながら言い直す。
隆弘は「くすっ」と笑って褐色に焼けたそのたくましい腕でわたしを強く抱きしめた。
「ひろみはストーカーじゃないでしょ? 奥さんでしょ?」
耳元で囁かれた言葉…。
上目遣いに隆弘を見ると…あのあったかい笑顔が目の前にあった…。
その笑顔に見つめられながら涙を流す…。
「『ストーカーじゃないでしょ? 奥さんでしょ?』」
隆弘の言葉を頭の中で整理する。
え!?
言葉の意味を理解したわたしは驚きのあまり声が出ない。
聞き間違い?
奥さんでしょ?!…?
奥さん!? てことは妻?!
「…ほんとに…?」
半信半疑のわたしが隆弘に問う…。
「ひろみ…。待たせてごめんね…。結婚しよう」
「はい…」
涙がとめどなくあふれる…。
躊躇なくわたしはそのプロポーズを受け入れた。
ギャラリーからは拍手喝采。さらに熱い声援。
「結婚おめでとう」他の選手からのあたたかい祝福。
隆弘は「ありがとう」といつまでもお礼を言っていた。
「たかひろ! 優勝おめでとう!」
わたしからキスのプレゼントをした…。
◇ ◇ ◇
たくさんの報道陣の前で隆弘はわたしの肩をぎゅっと抱き寄せ、大きくピースした。
今世紀最大のとびっきりの笑顔で。
わたしも隣でダブルピース。
「週刊誌に撮られたらどうする?」って2人で練習したあのときよりもずっとずっと…一段と大きなピースサイン。
史上最大級の笑顔の隆弘とひろみがそこにいた…。
トロフィーを抱えたふたりの写真は一生宝物にするね!
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