9『初恋』~エピローグ

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◇ ◇ ◇ 隆弘の最終組はすでにスタートしていた。 わたしは急いで、隆弘の姿を追った。 わたしの愛しい人…隆弘…。 スコアボードに『皆本隆弘』の文字を見つけた。 名前を見ただけで涙が溢れそうになる。 その姿を見ればたちまち切なくなる…。 苦しいよ…。胸が苦しすぎるよ…。 優勝争いを繰り広げているのは合計3人。 誰もが譲らず一進一退の攻防を繰り広げていた。 隆弘がバーディーで上がれば、同組の選手も皆、バーディーでホールアウト。 だから首位に1打差の2位タイでスタートした隆弘はなかなか差が縮まらず1位になれない。 PAR5の8番ホール隆弘がイーグルでホールアウト。 同じく2位タイの選手はパーでホールアウト。 これで隆弘が単独2位。 2位タイの選手は3位に後退。 1位の選手は8番ホールをバーディーでホールアウトした。 これで隆弘との差はなくなった。 『皆本隆弘』の名前がフルリーダーボードの1番上に躍り出る。 『皆本隆弘』1位タイ。トーナメントリーダー。 前半9番ホールを終えた時点で1位タイ。 スコアはトータル「-13」 勝負は後半戦へと持ち越された。 気持ちが切れないように…とわたしは隆弘の健闘を祈る。 心の中で何度も…。 10番ホールから後半戦がスタートした。 隆弘はドライバーが得意でものすごく飛ぶ。 ギャラリーも隆弘のドライバーでのティーショットに熱い視線を送っていた。 隆弘がティーショットをすると「すげーな」なんて声が飛び交う。 後半戦も両者譲らず一進一退の攻防。 トータル「-15」で18番ホールを迎えた。 PAR5。 ドライバーの飛距離で勝る隆弘が有利と思われたが最初のティーショットを右に曲げてしまう。 ティーショットを終えた隆弘が「やっちまった」とわたしに目配せした気がした。 一瞬目が合う…。 「優勝すればいいじゃん!」わたしは小声で呟く。 その声が聞こえたのかどうかわからないが… 隆弘は「うん」というように首を縦に振り頷いた気がした。 隆弘…もしかして…? わたしの存在に気づいてるの?
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