冬至祭

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《その魔物の言う通りだ。人の子よ。誰かと話をするのは久しぶりで楽しかった。焼き尽くされぬ前に立ち去るが良い》 「ダメよ!」 ウェンズディはドラゴンに向かって走り出した 『ちょ!ドラゴンから離れるならともかく、近づいてどうすんだよ!涙が取れても死んだら意味がないだろ!』 「違うわよ!バカ!ドラゴンもちょっと息を止めてなさいよ!」 ウェンズディはそのまま、ドラゴンの体に飛びつき肩の辺りまで登った 「たったのあんだけしか喋ってないのに、楽しかったなんて言わないでよね!」 一息ついて肩口に座る 『ドラゴンは誇り高い生き物だぞ!許可なく背中に乗るなんてどうかしてるよ!』 「あら。ここだったら、炎の心配せずにゆっくり喋れるじゃない。そんなの……」 小さい頃はウェンズディの周りにも友人と呼べる人は沢山いた。それでも、ウェンズディの落ちこぼれっぷりを見て、1人離れ2人離れ、今ではまともに会話をする人は嫌味しか聞いた事のないラストくらいだ 「私にはロロがいるから、寂しいなんて思った事ないけどさ。それでもせっかくなんだもん!どうせなら、私の苦労話で同情の涙くらい貰ってやるわよ!」 《面白い。聞かせて貰おう。言っておくが、私は笑い上戸だぞ?》 ドラゴンが愉快そうに炎をあげた 『笑い上戸?丁度良いな。ウェンズディの苦労話なんて、笑い話と変わんないよ』 ロロは諦めたようにため息をついて、ウェンズディの背中から膝に移った ウェンズディの話にドラゴンは炎を出しながら、笑いっぱなしだった 派手に箒だけ飛ばした話も、教室を暖めようとして爆発させた話も、ここに来るのにベッドカバーで飛んで来た話も…… ウェンズディも悔しがったり怒鳴ったりしながらも、いつしか笑いながら1日じゅう語り続けた ウェンズディの膝で、呆れながら片目を開けてドラゴンとウェンズディを見ながらロロはゆっくりと眠る事にした 『ドラゴンの涙が炎の熱で結晶になってる』 炎の灯りにキラキラと輝くそれはとても美しく見えた
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