プロローグ

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 とある晴れた日の早朝、少年が真っ白な浜辺を歩いていた。  歳は十代の丁度真ん中辺りといったところだろうか、潮風によって揺れる金髪は太陽の光を反射して、キラキラと輝いている。  しかしその少年は、どこか虚ろな表情をしていた。世界のほぼ全ての土地を歩き渡り、何の意味もない人生に、生きる希望を見失ってしまっているのだ。少年の鈍くなった思考回路の奥では、ドロドロとした感情が渦巻いている。 (もしここに彼女達がいなかったら、僕はどうすれば良いのだろう)  彼の願いは唯一つ、ある者達に会う事。そしてその者達に、自分を殺して貰う事だった。その為だけに彼は長い時間をかけて、たった一人で旅をしてきた。  少年は急に立ち止まり、広い海を見据えたかと思うと、身体や衣服が濡れてしまうのも気にせずに、海の中へと入っていった。もともと手荷物は何も持っておらず、身に付けている衣服も軽い素材でできていた為、彼の動きを制限するものは何もない。ひんやりとした潮の匂いが漂う水が、少年の身体を包み込む。  その時、彼の心は魚になった。母なる海は彼を優しく迎え入れ、少年は沖へ沖へと真っ直ぐに泳いでいった。視界は青緑色の幻想的な世界で覆われており、宝石の様に色鮮やかな生き物達が泳ぎ回っている。
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