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「…………思い出すとやっぱ泣けるな。辛い思い出なんてごめんだよ」
優真がそう言えばうんと頷くジン
過去を振り返り、思い出し、互いに泣いていた
2人にとっては最悪の思い出であるのに忘れてはならない記憶だ
ジンはその日大切な人を守れない自分の無力さと言うのを痛感した
「………もお帰るわ」
優真は涙を拭い、ジンの眼を見て言った
真っ直ぐで、綺麗な眼だ
1度深呼吸をして、優真はジンの両肩に手を置き言った
「オレはよぉ、ジン、アイツらがいなくなってから寂しかった。でもお前の方がよっぽど寂しかった筈なんだよ。だからな、またオレん家に来いよ。いつでも来いよ。あんま豪華な飯は出してやれねぇけどな。今までオレはお前まで亡くしてたら本当にどうしようかと思ってたんだ。だから頼む、頼むからお前だけは遠くに行くなよ?オレの最後の兄弟なんだからよ」
優真の言葉は本心そのものだった
優真の必死な訴えにジンはただ一言で返した
「……あぁ」
ジンに背を向けて闇夜の中を歩いていく優真
前を見据え、振り返らず、ただ力強く歩いていく
そんな優真を見送ったジンは優真の心の弱さと芯の強さを見た気がした
翔達が死んでから、今までたくさんの人に支えられてきたジン
しかし当のジン本人は、ただ毎日繰り返される慰めの日々が苦痛でしかたなかった
顧問には最後の最後で反抗的な態度をとってしまった
誠一はいつもジンを気遣い明るく振る舞っていた
しかしそれも今日が最後
何よりも優真と交わした約束は上辺だけで、果たせないのは明確だった
ジンはただ、己を悔いていた
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