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「………悪いなみんな……」
ジンは空を見上げた
先程見ていた月は厚い雲に隠れていた
少しずつだが雨が降り始め、ベンチの供え物に滴が当たればビニールや缶独特の音が響いた
雨が降り、街が泣き出した
ジンは街一帯を見渡し、世話になったと呟いた
「………オレさぁ、やっぱ辛いよ。翔がいなくなって、里奈がいなくなって……。誠一と優真はずっと側にいてくれた、正直メッチャ嬉しかったし。清美ちゃんには悪い事したな、ごめん。ってかみんなごめん。…………オレ、もう限界なんだよ」
ジンは2人を失った悲しみを理解出来ず苦しむ日々の中で考えた……
自分に力があれば、と
ここはフェンスの上
今にも落ちそうな1人の男
空を見上げ、ただ降り注ぐ雨を顔で受けとめる
痛くはない、そう、痛くはないのだ
空高くから降ってきたのに痛くないのだ
「………痛く……ないよな?」
男は前を向き、口角を上げた
視界を覆う光と闇
耳を塞ぐは雨の音
体温を奪う水に微笑み
心を蝕む重荷に涙す
「…………じゃあな」
重力に身を任せ
なんの抵抗もなく男は落ちた
ここはフェンスの上
男が立った場所
そこから見下ろせるのは
道路に転がるジンの死体
それを見下ろすは
あの日の男
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