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「なぁなぁ、清美ちゃんと何話してたんだよ~?清美ちゃんちょっと泣いてんじゃねぇか、アレ」
ジンが自分の荷物を整理し終えた時、やたらソワソワしながら近づいてくる奴がいた
またかよ…、とジンがため息を吐き、顔を上げれば予想通りの男がそこにいた
「このエロメガネ」
「なっ!?失礼だろ!!エロは許すけどメガネは許さないぞ!!」
いつもと同じやり取りをいつもと同じセリフで行う2人
「明日はアイツらの命日だから花添えに行くんだとよ~」
自分の荷物を持ち上げながら話すジン
「………悪い」
急にションボリするエロメガネ
先程のテンションはどこかへ飛んで行ったようだ
「んで?誠一は行くつもりなのか?エロ本屋」
「………いや行かなきゃダメだろ!!」
「行かなくてもいいよ!!」
コントの様にビシバシと突っ込みを入れるエロメガネこと誠一
彼は 今の ジンの良き理解者であり良きパートナーである
また2人してテンションを落とす事は滅多になく、片方がテンションを下げればもう片方が強制的に上げようと努力する
それが2人の暗黙の了解なのだ
「ちょっと話があるんだけどいいか?」
さっきまでケラケラ笑っていた誠一が真顔になった
これまた顧問といいなんなんだお前らは!!と悪態を付くジン
しかし誠一はメガネ越しに鋭い目付きでジンを見据える
この状態の誠一には何を言っても聞いてはもらえず、どんな冗談も笑ってはもらえない
そんな状態の誠一からは普段のエロメガネ全開パワーは想像出来ない程だ
「オレ思ったんだ、ジンには来年シングルでインハイ目指してほしい」
そう呟く誠一
「………」
その誠一から目を逸らさずただ黙り続けるジン
沈黙が長く続き、お互いに目を逸らし合う事などなく、ただただ互いを見る事しか出来なかった
「んじゃな」
そう切り上げそそくさと帰っていく誠一
普段はスニーカーの紐など結ばないのに今日はガッチリと結んでいる
立ち上がり、体育館を出て走り去っていく誠一をただ呆然と見送るジン
気付けばだだっ広い体育館にはジン1人だけが残っていた
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