おぉ、どう?ファンタジー

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「マジでいい名前だよ、真に優しいなんてよ…」 ジンが力なく呟けば、フェンスに肘を起き街を見下ろす優真がよせよ、と鼻で笑いながら答えた 「…………優しさってのは翔の為にある言葉なんだよ。アイツ程優しい人間は今まで見た事ねぇからなぁ」 優真はまるで翔こそ世界最高と言わんばかりに褒めちぎっている そんな優真の声音を聞き、お前はバカだなぁとぼやくジン ジンの視線の先には先程優真が置いた薔薇がある 翔と里奈の中間に置かれる様にして しかもよく見れば花の中に手紙がある 汚い字ながらも翔と里奈に宛てた手紙だろう 翔の為にコーラの缶をポッケに入れて来ていた優真はジンから見て左側にコーラを置いた 里奈とは面識が無いはずなのにちゃんと里奈の分のチョコも用意してあった 里奈のチョコはジンから見て右側に…… 「優しいのは優真も一緒だよ。ただなぁ、チョコとコーラの置く位置が逆なんだけど」 呆れた様に優真に聞くジン しかし優真は少し顔を赤くしながらわざとらしく答えた 「…あっ、あれ?逆だったっけ?」 優真のとぼけた答えを聞いたジンは笑い出した 爆笑と言うよりは一本取られた感じの少し驚き混じりの笑いだ 「ハッハッハッハッ!!!優真のくせに中々粋な事するじゃねぇか!!」 ジンには分かっていたのだ あの優真が間違える筈が無いと 毎日この公園に来て線香を立てる優真が翔と里奈の位置を間違える筈がないのだ 「…………た、たまには互いの好物くらい味わってやんねぇとな」 ジンに自分の本旨を容易く悟られた優真は耳まで真っ赤に染めていた ジンは立ち上がり優真の肩に手を回した 「オレはお前の優しさも好きだぜ?」 「…………ありがとう」 眼の前に広がる光の群れを見ながらジンは言い、それに戸惑いながら答える優真 振り向けば翔と里奈の仲を祝福するように置かれる薔薇 「本当に……、お前って奴は………」 ジンはまたしても泣いていた 振り向く際に優真の涙を見てしまったから……
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