第二章

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「これはまた随分な田舎町に来たもんだ」 俺らの地元だって都会って訳じゃあないけれどそれでもこういう所を訪れてみると、いくらかまだ栄えている方なんじゃないのかと感じてしまう。 「こんな見渡す限り山なんていうところ初めて来た! なんかテンション上がる! 空気めちゃめちゃ美味しいし!」 電車内途中から急に不機嫌になっていたのにこれまたいきなりテンションマックス最高潮なみずきさんである。 「おいおい、急に元気だなぁ。どうした?」 なにか良いことでもあったのか? 「だって観てよこの景色!」 みずきは両手をこれでもかというほどに広げ、終いには一回転までした。 「んー、山が見えるな」 「そうだよ! 山だよ! なんで翔ちゃんがテンション上がらないのか不思議だよ」 って言われても別に登山をしに来た訳じゃあないからなー。 それよりも今はCBCのイメトレで手一杯なんだよ。 「はーあ。これだからCBCバカは……。高志は、」 と高志をちらっと見て、 「普段からたまに登山していたりするしね……」 もう一つ、身体の奥底から出すみたいに深い嘆息をついて、 「なんかつまんない」 また不機嫌モードに入った。
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