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「お父様のせいなんかじゃありません…! …少し待っていてください、すぐに手当てを……!!」
立ち上がりかけた結菜の手を掴んだまま龍清が静かに首を横に振った。
「もう、いいんだ。私はもう助からない。恵里はもう……」
そう言って妻の倒れている方へ目を向けて龍清は辛そうに視線を伏せた。
「でも……!!」
「いいから。……結菜、これを………」
痛みに顔を歪めながら龍清は、懐から白と透明な石が連なった数珠を取り出して結菜に手渡した。
「これは、白凪家の家宝の一つ派水晶羽だ。……本当は、私がこの数珠について説明すべきなのだが……げほっ、ごほっ……私には、もう話す時間が残されていないようだ。…だから……青河家。結菜も小さい頃よく世話になった青河家へ行って……助けてもらいなさい」
「そんな……!! 私、お父様たちを残して一人でなんて……」
「結菜。私はもう…………。だから、私とお母様の分まで。生きろ」
泣きじゃくる結菜の頭をそっと撫でて龍清は微笑んだ。
「お父様…! 私をこの世に一人にしないでください……」
「今までありがとう、結菜。これからも強く生きるんだぞ……!!」
そう言って龍清は結菜の頭を抱き寄せて涙を一筋流し、静かに永遠の眠りに着いた――――。
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