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「もう帰ろう、もうじき暗くなる」
「あ、うん‥そうだね…
僕が階段を一段降りたそのとき、夕陽に黒く映る2人は立ち止まった。
ねぇ待って仁君!」
しばらくの間が続く中、僕は振り返り「どうした?」と、きょとんとした返事を返した。
すると、先ほどまで朱色だった唯ちゃんの顔は真っ赤に染まり、拳を握りしめ、みんなに聞こえるくらいの声で言った。
「きょ、今日!仁君ん家に‥泊まっていい…かな?」
「いいよ…ちょうど父さんが急な出張で出てるから、夕飯が一人分余るんだ」
もちろん僕には、唯ちゃんがそう言った本当の理由も、顔を真っ赤に染めた理由も分からなかった。
「本当に?本当に泊まっていいの!?」
「え?別にいいけど…どうしたの?そんなに喜んで」
「あ、いや、別に…お泊まりだからだよ!友達の家にお泊まりするの、初めてだから」
「ははは、面白いな、行こ?」
笑って手を差し伸べると、真っ赤な顔そのままに、恥ずかしそうに僕の手を取った唯ちゃん…その手はなぜか熱かった。
きっと夏の気温のせいだろうと僕は思った。
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