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「―――ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
耳には自分の忙しい呼吸音だけが聴こえていた。
「――――答しろ…ン!意識はあるか!?応答しろ、シンッ!」
やがて誰かの怒鳴り声が耳にねじこまれる。
「おい、シンッ!」
気力を振り絞って、かすむ目を勢一杯見開き、目の前の赤く濡れている機器類に手を伸ばす。
「――――隊長……」
まるで自分の声とは思えないような小さくか細い声が出て驚き、戸惑う。
「よし、シン、意識を取り戻したんなら、さっさと逃げろ!かなりやられちゃいるが、お前の機体はまだ動けるだろ?」
言われて思わず周りを見渡す。
辺りは青と赤の機械ランプが点滅していたり線を流したりしていて、あぁ、いつも通りだ。俺はまだやれるぞ、と思う。
でもパイロットシートってこんなに寒い場所だったっけ、とも思い、左を見るとギザギザの小穴が空いていて、そこから冷たい風が雪と一緒に入り込んできていた。
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