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鈴鹿
携帯のアラームが鳴り響き、ゆっくりとした動作でそれを止める
スタート30分前だ
俺は少し救われたような気がした
とにかく暑いのだ
トランポの中でエアコンをかけての仮眠ではあったが、灼熱の太陽の下では、あまり用を成さない
真夏の三重県鈴鹿サーキット…
摂氏38°の灼熱地獄の中、闘いが始まろうとしている。
そんな中では神経も高ぶり仮眠などとれやしない…
ぬるいエアコンの中で高ぶる神経を押さえ付けなければならない地獄から解放され、俺はツナギのファスナーを勢いよく上げた
昨日の転倒でファスナーが傷ついたのか、作動性が鈍い…、昨日を思い出し苦笑いを浮かべながらトランポを後にする。
メインストレートに並べられたマシン
その前から数えて15番目、ペアライダーの染谷圭一(そめやけいいち)に支えられ、それはそこにいた
俺達のもうひとつの手足…
RGV250γ
真夏の祭典「鈴鹿耐久8時間レース」国際耐久選手権の中にも組み込まれてるそれはプロフェッショナル達の闘いの場でもある
それの前に前座的な役割で開催される「鈴鹿耐久4時間レース」
8耐がプロの闘いの場ならば、4耐はアマの闘いの場…
国際ライセンスを持たない者達で争われるレース
全国から優勝を夢見て何百人ものライダーが集まってくる。
この俺、松田剛志(まつだつよし)も、そんな中の一人だった
俺は、コースのピット側に並べられたそのマシンをコースの観客席側からじっと見詰め、静かにその時を待った…
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