第八話 『ひずむせかいうつるせかい。』

3/107
758人が本棚に入れています
本棚に追加
/1182ページ
むかしむかし、表情の少ない少女は、一人で居るのが好きだった。 あの人に傷付けられずに済む、一人の時間。 学校からの帰り道、寄り道をして孤独を貪った。 唯一、自分が自分で居られる時間が好きだった。 そんなある時、少女は子猫を拾った。 雨の日の帰り道、箱に入れられた金色の子猫を見つけたのだ。 少女はそれを見付けて、目の前でしゃがみ込む。 そして小さな頭を指先で撫でて、少し困った顔をした。 家に連れて帰れば、きっとあの人に殺されてしまう。 けれど、みぃみぃと心細げに鳴く子猫を放ってはおけない。 悲しいくらいに声をあげる子猫。 可哀想な子猫。 自分より弱くて小さなそれ。 助けたい。
/1182ページ

最初のコメントを投稿しよう!