第五話 『ひつようあく。』

181/243
前へ
/1182ページ
次へ
数日経ち、仲間が更に二人死んだ。 生き残っている有髪族もみな倒れ、苦しそうに咳き込んでいる。 そんな中、レモナは火にかけ続けて外側の焦げた大鍋を、力無くかき混ぜる。 仲間達が死んで行く。 顔の見えない彼女も、あの場所になかなか訪れなくなった。 効かない薬を作り続けるその背中は、ひどく切なくて。 苦しむ仲間達は、その背中に薬が効かないと文句を言う事なんて出来なかった。 もう無駄なのだろうか。 不味く苦い薬ばかり飲ませるよりも、静かに死なせてやった方が良いのだろうか。 レモナの頭に浮かぶのは、安楽死と言う文字と、どうしたら苦しまずに殺せるか、その方法。 それを振り払うように、ぱさぱさになった髪を振って俯いた。 助けたい、助けたい。 でも、助けられない。
/1182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

758人が本棚に入れています
本棚に追加