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額から血を流したまま、少女は虚ろな顔でやって来た。
すっかり元気になり、体も少し大きくなった子猫は驚いた。
社から出て境内に転がっていた子猫、その前に現れた少女。
少女は泣き笑いで子猫を抱き上げて、告げる。
「ねぇ、行こう」
どこへ、とは言わなかった。
どうなるかは、分からなかった。
けれど子猫は、頷く代わりに頬をざらりと舐める。
お前について行くと、言葉を口に出来ないから。
子猫はまだ、喋れないから。
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