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その問いに対しても、沈黙したままの浅葱。
怜奈の不安は増す一方だ。
「……夜宵は良い奴。私は、それ以上は分からなくて良い」
何だ、その放棄……
「……頭の悪い私が分かっても、意味が無い。必要最低限の事を理解して、後は頭が良い人だけ分かれば良いと思うな」
ポリポリと頭を掻いた怜奈は、溜め息を漏らして夜宵の居る方へ振り返った。
私も頭、悪いんだけどな……
何はともあれ、夜宵に危険性が無い事は理解して貰えたみたい。
そこが分かって貰えれば、取り敢えず今は良い。
静の性根を叩き直すのは、また次の機会だ。
「ごめん、お待た……」
怜奈はそう言い、夜宵に発言を促そうとした。
それに対して右手を出し、怜奈の発言を止める夜宵。
「時間、一時間、経過」
そう言われて時計を見た怜奈は、夜宵の無言の申し出を受け入れる。
怜奈に皆まで言わさず、涼介と浅葱は立ち上がって部屋を移動する事を承諾した。
「何処に行く?」
「少し、待って」
そう言って小さな歪みを作り、そこに目を通す夜宵。
昨日の鬼事で怜奈も見た、覗く為の歪みだ。
何処を見ているのかまでは、怜奈の位置からは分からない。
「手前、部屋、大丈夫?」
怜奈は頷いて鞄を担ぎ直し、先に部屋を出た夜宵の背中を追う。
涼介達もそれに続き、四人は部屋を後にした。
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