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それまで自分から口を開く事はしなかった灰谷だったが、不意に一輝に話し掛けた。
「……お前さ、怜奈の事が好きなのか?」
「き、急に何だよ!?」
灰谷の言葉に、明らかに動揺する一輝。
分かりやすい奴だ、と心の中で呟く灰谷は扉に目を移した。
「それとも女が好きなのか?」
一輝は見た目も言動も軽い。
街中を見渡せば高確率で見掛ける鬱陶しい男、見た目はそんな所だ。
誰彼なしに女の子に声を掛けそうな一輝は、本当にそうなのか?
灰谷はその真偽の確認を行った。
「怜奈ちゃんは好きだし、女の子も好きだ」
その答えに眉一つ動かさず、灰谷は小銃のストックを床に付き、銃身を持った。
「欲張りは良くないな。怜奈が居れば他の女なんていらない、お前にはそういう気概は無いのか?」
「無い!!」
……話にならない。
灰谷は呆れた様に首を振った。
一輝は灰谷が思った通りの男で、灰谷が好くタイプでは無い。
それが再確認出来ただけ、よしとするべきか。
自分を納得させる言い分に行き着いた灰谷は、そのまま会話を終了させる。
「だって、それは俺の勝手だろ?」
ああ、お前の勝手だ。
お前みたいな男は、いつか女から手痛い仕打ちを受けるだろう。
いや、もう受けているのか?
怜奈から一輝の紹介をされた時の事を思い出した灰谷は、口元を緩めた。
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