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「俺の勝手な気持ちで他人に迷惑掛けなくても、俺は怜奈ちゃんが好きだ。他の女が居てもそれは変わらない!」
灰谷は目を見開き、一輝の顔を見た。
……前言撤回。
今時、こんな奴がいるのか?
こんな青臭い事を平気で言える、こんなチャラけた男が?
灰谷は、ふっと笑った。
「俺に言ってどうすんだよ」
「お前が聞いたんだろ!?」
顔を真っ赤にしている一輝を見た灰谷は、天井を仰いで目線だけを一輝に向けた。
「分かった分かった、今度怜奈に伝えとく」
「止めろ!止めれーっ!!」
恥ずかしい事を平気で言って退けたかと思えば、赤面して暴れまわる一輝。
灰谷は、その感情の豊さに半分感心し、半分呆れていた。
「あいつも……、お前みたいなガキが相手だったら、傷付かずに済んだのにな……」
箪笥に頭をぶつけ、灰谷は一輝から目線を外した。
上手く聞き取れずに聞き返す一輝。
灰谷は小銃を担いで瞳を閉じた。
「……何でもねーよ、ばーか」
また口喧嘩に発展しかねない発言に、矢張り反応する一輝。
だが灰谷は人差し指を口に当て、一輝を黙らせた。
耳を澄ませ、石造りの廊下から聞こえる足音を確認し、小銃を扉の上部へ構える。
一輝も聞き取れたらしく、立ち上がって鬼の出現に備えた。
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