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意味不明な言い争いをしている怜奈達を止めようとする涼介。
そんな三人を余所に、夜宵は後ろ手を組んで少し屈んだ。
怜奈を見上げる形で口を開く。
「作戦は?」
現実に引き戻された怜奈達は、各々顔を見合わせる。
やがて代表して、怜奈が口を開いた。
「普段離れない敵が別れてると聞けば、これを機に叩きたい……、とは思う」
怜奈の発言に肯定を示す浅葱と涼介。
単数で叩ける物なら、今叩いた方が良いに決まっている。
だが怜奈は一瞬だけ、後ろに立つ涼介に目線を移した。
「……でも、今は戦えない。理由は分かってると思うけど」
今の涼介を連れて戦うのは危険だった。
戦力となるのが自分と浅葱だけでは、正直心許ない。
更に連戦は必至、先に灰谷と合流したいが、そうなる前に敵が合流するだろう。
「成る程、それなら……」
途中で発言を止めた夜宵に対し、浅葱が口を開こうとしたが、怜奈の手がそれを阻んだ。
「……ふむぐっ」
足音が廊下に響き渡る。
浅葱の呻き声が聞こえたのか、確実にこちらに近付いている。
振り返って距離を測っていた夜宵は、ゆっくりと背中に担いだ腰刀を引き抜いた。
他の部屋を探索する事なく、真っ直ぐ怜奈達が居る部屋へ向かって来る鬼。
「どうにも、思い通り、行かない」
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